以上の検査より右側の胸椎(背骨)11番目と12番目の間の椎間板が上に飛び出して脊髄神経を圧迫している事が、判明しました。手術により、椎弓という脊髄の上の天井の骨を削り、飛び出してしまった椎間板を除去し、無事、脊髄の圧迫を解除できました。
下の写真が、手術翌日の写真と手術2週間後の写真です。
手術2週間後
後ろ足で体が支えられます。現在、正常な歩行が可能です。
症例3 橈骨骨折
1歳2か月のイタリアングレーハンドのフランちゃんです。右手の橈骨(橈骨)・尺骨(しゃっこつ)という骨が骨折してしまいました。非常に運動量が多いワンちゃんですので、強固な固定が必要です。通常T字型のプレートを使用するケースが多いのですが、ちょうどネジを入れる穴が、骨折部位に当たる為、直線のプレートを使用しました。
骨折レントゲン
この骨折は、人間で言い換えますと手首と肘の間の骨折になります。画像下が手の先端側、画像上が肘側になります。どちらかというと手首に近い側が骨折してしまったイメージです。また、骨が二本ならんで見えますが、左が橈骨という骨、右が尺骨という骨です。
手術後
骨折したところに、直線のプレートを載せ、骨折したところの上に4本のネジ、骨折したところの下に3本のネジを入れてあります。骨折した線が僅かに確認できます。また、向かって右側の尺骨という骨には、プレートを付けず、骨折断端のみ合せます。
術後3か月後
やや見えずらい画像ですが、骨折の線は、完全に消失しています。現在は、通常歩行しています。
フランちゃん
このワンちゃんは、骨折手術前に肝炎を起こしていましたので、飼い主さんの希望により、プレートとネジの除去はせず、様子を見る事にしました。(プレートとネジの除去には、麻酔を掛けなくてはいけません。)
症例4 脛骨形成不全症
6か月齢のミニチュアダックスのフウ太郎です。脛骨形成不全症という病気にかかり、踵より上の骨が内側に曲がってしまう病気です。この病気は、8か月齢になってから手術すべきかどうか考えます。もし、生活に支障(転ぶ、ビッコなど)がある場合は、10か月齢前後までに矯正手術を実施した方が、 良いです。
手術前
向かって左側の骨が内側に曲がっています。10ヶ月齢を過ぎたところでも、ビッコが認められたので、矯正手術を実施しました。
手術後
手術は、ハイブリット型創外固定器というものを使用します。最初に曲がっているところの骨を切断し、骨を真っ直ぐにした状態で、ハイブリット型創外固定器で固定します。この器具の特徴は、手術後に通常の歩行が出来ます。骨の白い部分が黒く抜けているところが、骨を切って真っ直ぐにしたところです。この部分が徐々に骨で埋まってくると白くなります。
手術6週間目のレントゲン
骨にあった黒い部分が白くなってきています。骨の再生が十分に進んでいます。
手術後、矯正器具が外れたレントゲン
向かって左側の骨が真っ直ぐになっています。以前は、走る時に、足を上げていましたが、今では、全速力で走ることが可能です。
ハイブリット型創外固定器の装着時の写真
足の動きを妨げないような構造をしています。
症例5 前十時靭帯断裂
チワワのクリンちゃん(5歳)は、車に乗ろうとして足を引っ掛けてしまってから、左後ろ足がビッコになっているという事で、来院しました。
診察において、膝の動揺感が認められ、前十時靭帯断裂が疑われます。そこで、レントゲン撮影を行いました。
正常な右足
大まかに見ますと、上下一本ずつ骨があり、真ん中で接しています。この接している部分が、膝の関節です。二本の骨が直線的に並んでいるのが、解ると思います。これは、正常です。
異常のある足
上の写真と比べて、下の骨が向かって左側に飛び出しているのが解ると思います。これは、前十字靭帯が切れている事を意味しています。
小型犬の場合、部分断裂の場合は、程度によりますが、内科療法で歩行可能です。しかし、今回のケースでは、完全断裂ですので、外科手術が必要と思われます。
しかし、手術しないで済むなら、これにこしたことはないと思いますので、一週間、痛み止めを飲みましたが、ビッコは、依然として同じでした。
飼い主さんとご相談の結果、まだ、若いので、しっかり手術して、以前のように歩行させたいとのことでした。
手術は、人工靭帯を設置します。また、手術に伴い、断裂した前十字靭帯の除去し、損傷した半月板の除去が、必要になります。以下が手術後の写真です。
手術後見出し
下の骨が左側に飛び出していないのが、解ると思います。また、人工靭帯を通す穴が下の骨に開いています。(下の骨部分に黒く抜けている部分があります。これが、骨に開けた穴です。写真のちょうど真ん中より下です。)
手術後、順調にリハビリを実施し、現在通常に歩行しています。
症例6 猫の下顎骨折
猫のファルちゃんは、脱走後に帰宅したのですが、口から出血と涎が認められるとの事で来院しました。口を痛がり、食事を取れないそうです。見た目には、下顎が歪んで見えました。
そこで、最初にレントゲン撮影を行いました。以下が、そのレントゲン写真です。
下顎骨折
明らかに下顎が、骨折し、顎がずれています。真ん中に柿の種の様なものが見えますが、これは、下顎が、右側で、骨折してしまって、犬歯(右下顎の犬歯)が移動してしまっています。
このケースの場合、手術以外の方法は、ないと思います。
手術は、ワイヤーで治しますが、骨折部位が、比較的先端に近く、二本のワイヤーを設置するのは、厳しいようです。
逆に一本のワイヤーで、強固かつ骨がずれない位置にワイヤー入れないといけません。顎骨折は、比較的容易に思われますが、実はズレて治ると大変な事になります。
というのも、人間の場合は、歯が、箱状に並んでいますが、猫の歯は、エベレストの様な形をした歯が、顎に沿って並んでいますので、顎がずれた状態で治ると口が、完全に閉じられずに、半開きになってしまいます。
よって、力学的に最適な位置のワイヤー設置が必要となります。
以下が手術後のレントゲン写真です。
ワイヤー設置後の写真
正しい位置に整復できていると思います。
手術2か月後の写真
咀嚼に問題なく、見た目も正常と同じです。