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○○町の○○○科クリニック。ホーム動物病院です。

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 腫瘍外科/外科HEADLINE

腫瘍外科・外科症例紹介

症例1 ワクチン誘発性肉芽腫

猫ちゃんの腫瘍のお話です。
平成24年8月に、かなり遠方の病院にて、肩甲骨の間にある腫瘍を取って頂いたんのですが、また、大きくなってきているとの事で、同年10月に来院しました。手術実施病院での、腫瘍の病理検査では、ワクチン誘発性の肉腫(悪性腫瘍です。)の疑いが非常に高く、細胞分裂もかなり激しとの結果でした。
手術後,僅か2ヶ月で再発してくるのは、腫瘍細胞の増殖スピードが速く、悪性度が非常に強い事を、意味しています。

この猫ちゃんは、12歳という高齢に差し掛かっていましたので、手術に耐える事ができるか。また、他の部位への転移があるか、検査を行いました。

検査結果
血液検査 正常
尿検査 正常
心電図 正常
レントゲン検査 左腎臓委縮、心臓は、やや横に傾いている(高齢の為) 胸椎の棘突起に骨融解病変(シコリの下の背骨に腫瘍が広がっている事を意味します。)、肩甲骨正常(手術中、肉眼での確認が必要です。)
腎臓エコー検査 腎臓は、やや高齢化しているが、極端な構造の変形はなく腫瘍の転移なし。

以上より、今のところ腫瘍は、肩甲骨の間にあり、転移は起こしていないように思えます。そこで、以下のような治療方針を、飼い主さんへ提示しました。

1.腫瘍は、増殖スピードが速く、悪性度が非常に強い事。
2.腫瘍は、背骨の一部の骨に広がっている(浸潤)為、背骨の一部とその周りの筋肉ごと切除が必要なこと。(エン ブロック切除といいます。)
3.実際の腫瘍より大きい切除が必要である事(拡大切除)
4.上記3を実施するには、肩甲骨に付着している筋肉を広範囲に切除し、体の別部位からの筋肉を移動してくる必要がある事。(形成外科が必要、形成外科を、しないと歩けません。)
5.手術後に、抗がん剤が必須な事。術後、抗がん剤を使用しないと100%再発すること。(手術時は、肉眼的にシコリがなく、腫瘍からなるべく離れたラインで筋肉ごと切除します。しかし、、顕微鏡レベルでは、腫瘍が残っている可能性があります。)


い主さんは、手術後の抗がん剤を前提とした、拡大切除を希望しました。

手術前の腫瘍の写真とレントゲン写真です。

肩甲骨の間にあります。かなり大きいです。
手術は、シコリと共に背骨の一部肩甲骨に付着している筋肉を一括切除しました。この方法は、エンブロック法と言って、腫瘍そのものには、メスを入れず一塊(ひとかたまり)で切除する方法です。腫瘍切除後、肩甲骨の周りの筋肉がなくなりましたので、肩甲骨が体から離れてしまいます。そこで、肩甲骨を、他の別の筋肉で覆う形成外科を行いました。出血もほとんどなく手術は、無事終わりました。
2週間後に無事抜糸も終了し、経過良好だったのですが、3週間目あたりから、貧血傾向が、見られました。
おそらく、これは、以下の理由が考えられると思います。
1.病気そのものストレス
2.3か月以内に手術を2回行っている事
3.上記の理由により、血液を造っているところ(骨髄)の動きが低下している為と思われます。

貧血の為、抗がん剤が使用できず、年明けの平成26年1月の初旬に、一回目の抗がん剤を行いました。この時点で、2か月と3週間過ぎていましたので、再発がとても心配でしたが、幸運にも、この時点での再発はありません

抗がん剤は、3週間おきに注射していきます。
そして、3回の抗がん剤を注射して、4回目の予定日に、貧血傾向が出てきたので、4回目の抗がん剤は、10日間延期しました。
4回目の抗がん剤実施3週間後に、貧血と血小板減少が認められた為、抗がん剤を延期しました、さらに1週間後、貧血の改善は、非常に遅く、白血数球が下がってきました。
 そこで、貧血を改善する為、ホルモン剤
     白血球数改善する為、顆粒球コロニー刺激因子
をそれぞれ、注射しました。
その後、貧血、白血球数、血小板数は、正常になりました。その後、飼い主さんの希望により、抗がん剤の追加投与は、見送り、様子を見ることになりました。
悪性腫瘍は、再発してくるのであれば、1-4か月以内に再発するケースが多いです。そこで、通常は、抗がん剤は、6か月間行うのが理想的です。
今回のケースでは、この時点で、悪性腫瘍切除後、すでに8か月を経過していますので、様子を見ても良いような気もしました。

現在、この猫ちゃんは、平成27年4月現在で、1年半経過しています。人間で言いますと6年間に匹敵します。絶対的ではありませんが、完治に近い状態です。

補足ですが、一部の腫瘍専門医は、全腫瘍の中で、一番悪性度が高いのは、ワクチン誘発性肉腫であると言っています。よって、今回のケースは、猫ちゃんも飼い主さんも非常に頑張って頂き、運も味方に付けたと思います。
最後に現在の背中の写真を載せておきます。

手術1年半後の背中の写真(シコリなし)



症例2 高齢腫瘍

ミニチュアダックスのチーちゃんです。(14歳8か月)

平成23年8月に、小指大のしこりを乳房に見つけました。

約2か月後の10月に、人の拳大の大きさに拡大していました。

お腹の表面にある腫瘍見

中心やや左下に、楕円形に白く写るのが腫瘍です。
飼い主さんは、チーちゃんが高齢の為、手術するか非常に悩んでおりました。(犬14歳8か月は、人間で75歳ぐらいです。)

そこで、まずは、健康状態を把握する為に、検査を行いました。

この検査は、人間と同じく、レントゲン、血液検査、心電図、尿検査、超音波検査(エコー)です。
(腫瘍の病気は、シコリばかりに目がいきがちですが、一番大切なのは、動物の全体の健康状態を把握することが、重要です。)

検査で以下のことが分かりました。

検査により、

1.腎臓結石らしきものがあること。2.心臓にやや拡大がみられること。

異常の検査結果から、

1.30-60分以内の麻酔ならば、実施可能であること。

2.手術後に、胸に水が貯まる可能性がある事(心臓病の動物や高齢の動物の手術の場合、手術後に肺に水が貯まる事があります。対策としたは、手術中に強心剤などを使用し、手術終了後、すぐに、レントゲン撮影を行い、もし水が貯まっている時は、利尿剤を注射します。また、術中の過度な点滴は避けた方がいいです。)

非常に悩んだ末、飼い主さんは、手術を決断されました。

手術時間は、切開から縫合まで約30分でした。

下のレントゲンは、手術直後のレントゲンです。水は貯まっていません。

手術直後のレントゲンです。

中央やや上にある楕円形の白い塊が心臓です。その周りの黒い部分が、肺になります。肺に水は、貯まっている様子はなく良好です。また、切除した白い塊の腫瘍はなくなっています。心臓の拡大も見られません。
手術翌日より食欲旺盛で、癒合不全(傷口が治らない事)もなく無事、抜糸できました。
その後、順調に回復していましたが、約6か月、肺の転移により亡くなりました。(手術部位の再発なし。

6か月(人間に換算すると2年間)が、長いと感じるか、短いと感じるかは、飼い主さんにとって様々と思われますが、少なくとも、大きなシコリから解放され、生活の質は向上した状態で、6か月の生活を送れたのは、事実かもしれません



症例3 足に出来た腫瘍

5歳のギルバート君の左足に数か月前からシコリが出来てきて徐々に大きくなってきたとの事です。

診察の結果、レントゲン撮影と針生検(シコリの一部に針を刺してどんな細胞で構成されているか見る検査です。)を行いました。

以下レントゲン写真です。

正常な写真です。

正常な二本の骨が並んでいます。

シコリのある足です。

二本の骨の右側に楕円形の白い塊がみえると思います。かなり、大きいです。
生検の結果は、肥満細胞腫(悪性腫瘍)というものでした。

昔ですと、断脚(とてもかわいそうですが、足を切り取ってしまう事です。)になります。飼い主さんにとって、とても切ない治療になってしまいます。
現在では、

@抗がん剤、ステイロイドで腫瘍を小さくしてから、切除し、手術中に放射線をあてます


A次に、抗がん剤を、2〜3週間に一回投与して、4〜6か月抗がん剤治療を継続します。

@の手術中の放射線療法は、施設の完備された大学病院などでないと、行えません。そこで、手術時の切除部位の切除範囲をなるべく大きくすることがポイントになります。

しかし、切除範囲を大きくすると皮膚が足りなくなります。そこで、必要になるのは、皮膚移植です。

今回実施した方法は、有形弁皮膚移植という方法で、肘の皮膚を帯状に切開し、腫瘍切除部位まで、引っ張ってきて縫合するというものです。ここで、さらなるポイントしては、移植皮膚の血行を壊さないで、皮膚を移植することです。

以下@手術前の写真、A手術後の写真です。

@手術前の写真です。

手術前に、薬物療法を行っていますので、見た目上腫瘍は、消失したように見えますが、実際に触診してみると腫瘍の芯のようなものが、まだ、残存しています。(薬物療法を中止すると、また、元に戻ってしまいます。)
点線で囲った部分が、腫瘍があった場所になります。実線で囲った部位が楕円形が切除部位になります。

A手術後の写真です。

肘の皮膚が先の方へ移植されています。この手術の場合、橈骨神経、橈骨皮静脈という神経・血管がありますので、これらを損傷しないように手術を行います。また、移植後の皮膚の結構も良好です。

抜糸後、発毛も完了した状態です。

歩行の異常は、全くありません。
抜糸後、皮膚が完全に癒合(皮膚同士が付くこと)した後、抗がん剤を3週間に一回行いました。5か月間行い、現在、再発は、ありません。


症例4 顎にできた腫瘍
8歳のクロちゃんは、下顎の先端に直径1cmの球状の腫瘍ができました。腫瘍が大きい為、口をしっかり閉めることができず、食事がとりにくくなっていました。

手術前の写真

右手の親指と人差し指の間にシコリがあります。
このうようなケースの場合は、下顎の先端1cm強を、切断する必要性があります。おそらく、シコリだけ切除しようとするとシコリの根っこが残り、再発します。

切除手術後の写真です。

若干、下顎の先端が短くなっています。ここでのポイントは、舌下小丘という唾液腺の排出部を壊さないことです。

手術後2か月目の写真です。

飼い主さん曰く、あまり違和感は、ないとの事です。また、採食も問題ないようです。


症例5 縫合糸反応性肉芽腫

2歳8か月の猫ちゃんです。
本症例は、遠方の病院にて以下なる治療を受けていましたが、芳しくないとのこで来院しました。

2011.9.22に腎臓の周りに肉芽腫(お腹の中で肉の塊が出来てしまう。)が発生したそうです。手術を試みましたが、癒着がひどく腸の3/4の切除が必要なため、手術は、無理とのことで、途中で中止しました。この際、出血が多く認められ為、他の同居猫より輸血を受けたそうです。

その後、ステロイドと抗生剤の一か月投薬で、、肉芽腫は、小さくなったそうです。そして、3か月休薬したところ、元気が消失し、皮膚に瘻管(皮膚に穴が開口している管)が出来、膿が出続けているとこ事です。膿の吸引と消毒に、一週間に1〜2回、通院していたそうです。

そして、1年4か月の通院治療生活を行って、飼い主さんは、かなり疲弊しておりました。年齢が2歳8か月で、このまま一生、薬を飲み続け。消毒を続けなければいけないのかと、悩まれていました。

最初の診察にて、お腹の中に、男性の拳の2倍程度の肉の塊が触診できます。頭側は、胃の後ろ、尾側は、膀胱まで肉芽腫(肉の塊)があるようです。レントゲンで撮影してもかなり大きいです。その後、エコー検査を行ったところ、腎臓、脾臓、膀胱、腹大動脈、小腸に癒着がひどく嚢胞(水ないし膿の様な水分が貯まった袋)が多数貯まっていました。

まず、この時点で、手術してもいい結果は望めないと考えます。
肉芽腫を、もう少し小さくして、手術すべきだと判断しました。また、この肉芽腫の原因は、避妊手術時に使われた縫合糸に反応して起こっていると思われます。縫合糸に対する過敏反応のようなものです。この縫合糸の除去も必要と思われます。。

近年、このようなケースは、増加傾向にあるように思われます。これは、体質的なもので、避妊手術を行った獣医師に過失は、ありません。

最初に7か月、抗生剤とビタミン剤を投与し、肉芽腫の縮小化を図りました。徐々に肉芽の範囲も減り癒着も以前よりは減少しました。手術を行っててもいいレベルに達したと思われました。

左写真は、投薬前の写真   右写真は、投薬後の写真

上記は、腹部のレントゲンですが、肉芽が縮小した為、右写真の方が、お腹が小さいのがわかると思います。(白いところがお腹です。白い部分の幅が狭いのが解ります。)























ここからの治療のポイントは
1.バリウム検査を実施し、肉芽(肉の塊)と腸管の位置関係を把握すること。
2.エコー検査にて、癒着、嚢胞(化膿した液体が貯まっている袋)の位置、数を把握する事。
3.レントゲン、血液検査、心電図、尿検査を行い、麻酔に耐えることができるかを検査する事。
4.肉芽腫の切除は、一般的に出血が非常に起こりやすいの、輸血のできる猫を準備し、血液が合致するか否かの 検査を事前に行い、必要性があればすぐ輸血ができるようにしておく事。

上記検査にて、癒着は、数多く存在するが、以前より改善していること。小腸の一部に、肉芽による狭窄(腸が狭くなっている事)が存在していること。麻酔は、掛けられ、ある程度の時間には、耐えうる事。輸血の不適合もない事。

以上より、手術に踏み切りました。肉芽腫の手術に関してですが、
1.かなり微細な手術になります。肉芽を正常組織から、剥がす場合は、膜を必ず切除する必要がある事。
2.肉芽腫の形には、規則性が全くない為、丁寧な切除が必要な事
3.神経は、なるべく損傷しない事、主要な血管は、絶対に損傷しない事
4.出血しやすい手術ですが、出血をなるべく抑える事。
5.肉芽のの完全切除を、理想とする事

上記内容を実施するには、0.2-0.5mmの膜を、メスで、剥離(剥がす)する技術が必要です。出血も多い可能性がありますので、慎重な手術が必要です。

手術は、お腹に、房状の肉芽が多数認められ、一つずつ切除を行いました。化膿した袋も、数多く認められ切除しました。また、この肉芽の原因である糸も摘出できました。一部、腸に走行する血管と腎臓に流入する血管に癒着がありましたが、すべての処置を終え、無事閉腹しました。出血は、ほとんどなくなく輸血の必要性は、ありませんでした。(因みに、原因となっていた縫合糸は、僅か1-2mmの長さです。)

その後、数か月間、内服し、手術後8か月が経過していますが、再発はなく、経過良好です。。





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